2020-01-01から1年間の記事一覧

見たら終わり

私が今までに訪れたどの自社仏閣にも似た神社にいる。姿形もおぼろげな友人と一緒にいる。境内には二本の松の木があり、それを拝むことができるという。私たちは一本の松の木の裏側に回った。正面では神主たちが儀式を執り行っていたからだ。松の木の裏側で…

初秋、雑感

生まれてこの方不安定な日々しか過ごしたことがなく、他人よりも何よりも自分が最も信用ならない心持ちで労働その他、人生の義務というやつを必死にこなしている。「意外と生きられるぞ」と思う日もあるにはある。が、前提として「だから何?」という生存に…

『砂の女』を読んで

恐らく、主人公の仁木順平に自身の面影を見る人は少なくないだろう。妻があり、職があり、傍目にはそう悪くない人生を送っている男。しかし退屈で単調で、周りの人間の些細な嫉妬や野卑にうんざりする。とは言え今更異なるたつきの道を切り拓く覚悟もなく、…

いつか素敵な浴衣を買おう

小学生に上がったばかりの頃だったと思う。祖母が浴衣を買ってくれると言って、祖母と母と私の3人で船場センタービルに出かけた。低い天井の古ぼけた店をいくつか巡って、黒地に苺が天の川のごとく散りばめられている柄の浴衣を私は見つけた。黒いのも天の川…